· 

第2話【認印のお話し】

2話 あるとも言えずないとも言えない 認印の話し

 

はんこ倶楽部へかかってくる電話相談の半数は認印の問い合わせです。

「みとめいん」です。「にんいん」ではありませんよ。たまにいらっしゃいますが・・ 話をもどします 

 

問い合わせの内容は 「00」という苗字のはんこはありますか?」です。

そんな時、「ある」とも言えず「ない」とも言えないもどかしさに襲われます。

なにせ一万苗字もある海のような認め印コーナーに収められているすべての苗字を暗記なんてしきれません。

はっきりしているのは旧字の入る苗字は有りませんと明言できることくらい。

「澤」邊」「濱」・・あっ「濱」は見覚えあるなあ・

あって当たり前の苗字「杉山」「鈴木」「佐藤」「田中」でさえも「あるかなあ」と頼りない対応をする始末です。というのも、あって当たり前の方々の苗字は全国区クラスで、認印コーナーからいち早く消えるのもトップクラスだからです。

よって電話口での即答は困難。

「探してみますね」

私の場合は受話器を置きっぱなしで探しに走ります。

なにせ電話機と認印コーナーとは、長方形の店の対角線上の外れとはずれに位置しており、そのたびに店内の最長距離を一往復しています。自慢にもなりませんが、私は電話を保留にはしません。置きっ放しです。電話が切れていない安心感とでも言いましょうか・・。

認印コーナーで「えーっ、おかべ おかべ はどこだ~」遠くの受話器に聞こえるように声を発して探します。結果、問い合わせの苗字があろうとなかろうと 声を殺して受話器を取ります。おもむろに、「ありますよ~!」とお告げします。

「取っといてください!後で伺いますから」毬のようにに弾む声が受話器の向こうからかえってきます。130円のプチドラマが最高潮に達する瞬間です。

 

 

                今日はここまで